紋様に宿る想い
アラベスク文様
「アラベスク」とはアラビア風の意味で、渦巻状の唐草の先が二股に分かれ百合の花をモチーフにしたものが多く見られます。どんどんパターン展開されていき、花は抽象的に表現され、エキゾチックな雰囲気に。それぞれの風土にあった様々なアレンジが加えられ、各地の絨毯に用いられています。
糸杉文様
糸杉は西アジアから地中海周辺、やや乾燥した地域に見られる樹木です。乾燥地に力強く伸びる木に、「生命力」「命」「健康」「長寿」などの意味を重ね合わせます。この木の周辺によく動物が描かれることがありますが、自然より、動物の命は与えられていることを内包しているのでしょう。
エスリミー文様
渦を巻くようにつながる蔓(つる)を意味しており、薔薇やユリ、睡蓮の花の断面図をモチーフにしています。シルクロードを渡り日本にも伝わり、「唐草文様」と日本人にも馴染み深いデザインとなっています。
花鳥文様
絨毯全体が、花は咲き乱れ鳥たちであふれかえり、春の楽園を表しています。イスラム教では偶像崇拝が禁止されていたため、基本的に生き物を描くことはできません。しかし、「コーラン」には古代イスラエル王国のソロモン王が書いた手紙を’やつがしら’がシバのビルキス女王へ届け、情報交換をしたと書かれていることから、鳥は良い知らせを運ぶという意味があります。
花瓶文様
ゴルダニ柄と呼ばれ、ペルシャ語で”ゴル”は花や異国の花を、”ダニ”は花瓶を意味します。花瓶から薔薇や生命の木が伸びているものもあり、豊かさの象徴です。華やかで明るい方向へ導いているようです
ボテ文様
ペルシャ語で「灌木」かんぼくという意味です。糸杉や松ぼっくりを元に描かれたという説があります。かなり古い時代のイランあるいはインド起源の文様で、上記の他、女性の涙、種子、葉、ゾロアスター教聖火、魔除けの凶眼など様々な起源や解釈があり、形態も幾何学的であったり、装飾的であったりとても多彩です。今、私達が一般的に「ペイズリー」の名前で知られているデザインのことです。
ゴンバッティー文様
モスクの丸天井にタイルやモザイクで装飾された、同心円状に広がるデザイン。産地により、デザイン、カラーが違い様々なモスク文様が見られます。
ヘラティー文様
名前の由来は、アフガニスタンの都市ヘラートからといわれています。イランではアカンサス(ハアザミ)の葉が様式化され、菱形と組み合わさって出来る花文と、その葉の形が魚に似ていることからマーヒー(魚)文様とも呼ばれています。
狩猟文様
ペルシャ絨毯における狩猟文様はアケメネス朝(前550-前330)から続く伝統的なものです。狩猟は王侯貴族の嗜み、ゲームであり、勇気や力、権威、勇姿を誇示するためのデザインです。ペルシャ語の”バイリダェザ”(狩猟の為の放牧地)は英語の”パラダイス”の語源となっており、古代王侯貴族にとって狩猟は楽園の喜びーパラダイスでした。
また、ヨーロッパでは狩人が家を守るということから、魔除けの意味もあります。
後向きに矢を射る図は「パルティアン・ショット」と呼ばれ、パルティアの兵士が退却する際、振り向いて最後の矢を放ったことからきています。「捨てゼリフ」の語源とも言われています。
イスラム圏では基本的に偶像が排除されたため、具象的デザインとしては花鳥を取り入れた文様の絨毯が多数製作されました。
ゴル・ボルボロ紋様
ボルボロは「ツグミ」を意味しています。花鳥のみが全体に散りばめられたデザインで、木々など風景が入ると「ランドスケープ」になります。
ゴルダニ・サラサリ紋様
花瓶を繰り返すデザインで、やや幾何学的なものや鳥と共にあるパターンもあります。中近東特有の嗜好で、隙間なくフィールドを埋め尽くしています。
ゴル・リズ紋様(小花紋様)
19世紀末〜20世紀初頭の絨毯作家アモグリの作品が有名で、クム産の絨毯によく見られます。
ゴル・ファランギ紋様
”ヨーロッパの花”という意味の花束型の紋様です。19世紀イランでフランス人工房が各地にできた頃に生まれた、ヨーロッパ風のデザインの一つです。
へザーレ・ゴル紋様(千花紋様)
”ミルフルール”とも言われ、ケルマン地方の絨毯に代表されるデザインです。複雑に小さい花や植物がフィールド一面に広がり覆っています。